漫画・アニメコンテンツによる訪日外国人観光客の誘客・周遊動態を分析
2024年11月19日
株式会社ナビタイムジャパン
漫画・アニメコンテンツによる訪日外国人観光客の誘客・周遊動態を分析
~熊本県宇土市ではONE PIECE像をきっかけに滞在者が約7倍に
複数の像を周遊するインバウンド客も~
株式会社ナビタイムジャパン(代表取締役社長:大西 啓介、本社:東京都港区)のNAVITIMEデータ分析チームは、訪日外国人観光客向けのナビゲーションアプリ『Japan Travel by NAVITIME』の利用状況から、訪日外国人旅行者の観光動態に関する分析結果を発表いたします。
NAVITIMEデータ分析チームでは、訪日外国人観光客の動態を明らかにする行動データ分析を通じて、日本全国の各地域の魅力向上に貢献できればと考えています。
本分析では、全都道府県を対象に、2019年度と2023年度の比較で外国人旅行者の滞在増加率を分析した結果、熊本県が最も高い伸びを示しました。熊本県内の滞在エリアを見ると、熊本城のある熊本市や阿蘇山のある阿蘇市、黒川温泉の南小国町といった有名観光地で知られる市町村ではないエリアで、外国人旅行者の滞在が増加している傾向が見られました。増加率の高かった市町村を見ると、2016年4月に発生した熊本地震の復興プロジェクト「ONE PIECE 熊本復興プロジェクト ※1」の一環で、2018年から2022年にかけてONE PIECE 麦わらの一味像が設置された市町村が上位となっており、滞在者数増加の一因であることがデータから示唆されました。
日本の漫画・アニメコンテンツは外国人旅行者の高い関心を集めていることから、今回の分析では、ONE PIECE 麦わらの一味像が訪日外国人旅行者の誘客および周遊行動に与えた影響について分析いたしました。
※1 「ONE PIECE 熊本復興プロジェクト」について(https://op-kumamoto.com/)
<分析内容>
・熊本県内の来訪場所(2023年4月~2024年3月)
- 2023年度(2019年度と比較し、2023年度に)滞在者数が増加した市町村
- 増加率が伸びた市町村の来訪場所
・ONE PIECE 麦わらの一味像への来訪状況(2023年1月~2024年9月)
- 鉄道駅からの距離と来訪者数の関係
- ONE PIECE 麦わらの一味像来訪者の周遊状況
- ONE PIECE 麦わらの一味像来訪者の県内周遊状況
※本分析には、ナビタイムジャパンが提供する訪日外国人観光客向けナビゲーションサービス(『Japan Travel by NAVITIME』)から同意を得て取得した「インバウンドGPS」データと属性アンケートを用いています。
※「滞在」の定義は、30分以上同一1kmメッシュ内で測位が確認された状態です。
■分析結果
熊本県内の来訪場所(2023年4月~2024年3月)
熊本県内の市町村ごとの増加率を集計しました。その結果、当社のデータでも外国人旅行者の滞在者数が熊本県内で最も多い熊本市、阿蘇市、南小国町をおさえて、宇土市が1位で7.33倍の伸びとなりました。宇土市について、具体的な滞在場所を確認すると、干潮時の絶景が有名な景勝地である御輿来海岸や宇土駅の周辺でも滞在が見られましたが、2022年11月に設置されたONE PIECE 麦わらの一味像のジンベエ像が設置された住吉海岸公園での滞在が最も多いことがわかりました。
熊本県内の市町村別の増加率ランキングと、ONE PIECE 麦わらの一味像の設置場所を重ねてみると、全10体の像が設置されている市町村で滞在者数の増加率が伸びていることがわかります。このことから、ONE PIECE 麦わらの一味像が、訪日外国人旅行者が熊本県内の各地を訪れるきっかけの一つになっていることが示唆されます。
ONE PIECE 麦わらの一味像への来訪状況(2023年1月~2024年9月)
実際にONE PIECE 麦わらの一味像を訪れている外国人旅行者の来訪状況を分析するために、2023年1月~2024年9月に対象の像の周辺を訪れた外国人旅行者のデータを抽出しました。対象の像が含まれる125mメッシュに滞在した旅行者を、像を訪れた外国人旅行者として分析をしています。
いずれかの像を訪れた旅行者の総数を100%とした場合の各像の訪問率をみると、外国人旅行者の利用が多い阿蘇駅前のウソップ像が訪問率としては最も高く、観光地としての人気や駅の近さが訪問率を押し上げている一因と考えられます。次いで、ルフィ像、チョッパー像、ゾロ像、フランキー像と続きます。市場別に見ると、東アジアは他市場と比較してもウソップ像が特に訪問率が高くなっており、他の観光地に行くまでの立ち寄り地点として訪れていることが推察されます。東南アジアは熊本駅からも近いルフィ像への訪問率が高く、限られた旅行日数で立ち寄れる場所には積極的に立ち寄ろうとしている様子がうかがえます。欧米豪は全体的に訪問率が高くなっており、また、訪問地点数の割合を見ても、他の市場に比べ、1箇所だけではなく複数箇所周遊している様子がうかがえます。
経路検索での検索数が最も多く、交通の起点になっている熊本駅からの公共交通機関を用いたアクセス時間と訪問人数の関係をプロットし、訪問されやすい像の傾向を調査したところ、熊本駅からのアクセス時間が短い像ほど訪問されやすいことがわかりました。また、熊本駅から離れている像でも訪問人数が多い像を見ると、前述の阿蘇駅前に設置されているウソップ像や最寄り駅からの距離が500m未満のフランキー像が訪問されやすい傾向にあり、訪問のしやすさには最寄駅からの距離も関係していることがわかります。
周遊状況を明らかにするため、いずれかの像を訪れた旅行者の総数を100%とした場合の各キャラクター像間で一緒に訪れられている割合をペアごとに集計しました。熊本駅からも近く、地理的にも近い、ルフィ像とチョッパー像の組み合わせが最も一緒に訪れられやすく、電車・バスで行けるゾロ像やウソップ像を一緒に周遊する組み合わせも多いことがわかります。
2地点間の公共交通機関を使った所要時間を色、訪問率の高さを太さで表した地図を見ると、所要時間が青~緑の比較的距離が近い像同士が、訪問率としても高いことがわかります。また、ある地点を訪れた人が別の地点を訪れる確率の高さを示すリフト値※2を使って評価をすると、フランキー像-ジンベエ像やナミ像-ロビン像、ロビン像-ジンベエ像など移動に時間がかかる組み合わせでも数値が高くなっており、周遊されていることがわかります。また、公共交通機関だけでは移動に時間がかかることから、自動車で周遊されている可能性も高いと考えられます。
※2 リフト値とは、A地点へ行った人が、別のB地点にも行く確率はどの程度か相関性を示す値。
ONE PIECE像を訪問した訪日外国人旅行者を対象に熊本県内の滞在場所を見ると、熊本城、黒川温泉、阿蘇山等の人気観光地の他、駅前にフランキー像が設置されている高森駅からバスでアクセス可能な上色見熊野座神社やブルック像の近くにある御船町恐竜博物館への滞在も見られました。このことから、来訪するきっかけとなるコンテンツがあれば、周辺観光スポットへも滞在され、地域内での周遊促進にもつながる可能性が示唆されました。
今回の分析では、新しく作られたコンテンツが、訪日外国人旅行者の訪問のきっかけとなり地域への来訪者数の増加に貢献していること、また、1地点を訪れるだけでなく周遊にもつながっていることがわかりました。
ナビタイムジャパンでは、訪日外国人観光をはじめ、国内観光、道路交通や公共交通などについて、移動に関する各種ビッグデータを用いた分析を行う、移動データ事業を提供しています。例えば、特定エリアにおける訪日外国人旅行者の傾向や隣接地域との比較などを行いながら、観光分析やマーケティングの企画立案、現状把握、効果検証等でご活用いただけます。
訪日外国人旅行者の動態データの提供を通じて、インバウンド受け入れ整備に取り組まれる自治体・事業者様の、観光戦略の検討やマーケティングをサポートし、国内観光および地域の活性化に貢献できればと考えております。
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「インバウンドGPS」データとは、ナビタイムジャパンが提供する訪日外国人観光客向けナビゲーションアプリ『Japan Travel by NAVITIME』にてユーザーの同意を得て取得された、訪日外国人観光客の移動に関するデータです。
●画像提供(敬称略)
熊本県観光文化部観光振興課
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