訪日外国人旅行者が訪れる温泉地を分析
2024年12月6日
株式会社ナビタイムジャパン
訪日外国人旅行者が訪れる温泉地を分析
~アジアでは由布院温泉や南紀白浜温泉、欧米豪では箱根湯本温泉や湯田中渋温泉郷が人気~
株式会社ナビタイムジャパン(代表取締役社長:大西 啓介、本社:東京都港区)のNAVITIMEデータ分析チームは、訪日外国人観光客向けのナビゲーションアプリ『Japan Travel by NAVITIME』の利用状況から、訪日外国人旅行者が訪れる人気の温泉地の分析結果を発表いたします。
日本の温泉は日本独自の体験ができることから訪日外国人旅行者から高い関心を集めています。観光庁の調査からも、「温泉入浴」の満足度が期待を上回る結果を示しており、体験価値としても高いことがわかります。
今回は、ナビタイムジャパンが提供する訪日外国人旅行者向けナビゲーションアプリをもとに、旅行者の温泉地への滞在状況を分析しました。
参考:観光庁:訪日外国人の消費動向(2024年4-6月期 報告書)
<分析内容>
・2023年11月~2024年10月に訪日外国人旅行者が滞在した温泉地の滞在数を分析
-市場別人気温泉地TOP5(アジア、欧米豪)
-国別の滞在者数ランキングTOP5(韓国、中国、オーストラリア)
※本分析には、ナビタイムジャパンが提供する訪日外国人観光客向けナビゲーションアプリ(『Japan Travel by NAVITIME』)から同意を得て取得したインバウンドGPSデータと属性アンケートを用いています。
※「滞在」の定義は、ナビタイムジャパンが日本経済新聞「日本百名湯」を参考に、独自に調査をした温泉地を地図上で区切ったエリア(ポリゴン)内に30分以上連続して測位が確認された状態です。
■分析結果
1.訪日外国人旅行者の市場別人気温泉地TOP5(アジア、欧米豪)
アジアからの旅行者に最も人気の温泉地は、大分県由布市の由布院温泉で、欧米豪からの旅行者には神奈川県箱根町の箱根湯本温泉が最も人気の温泉地となりました。
アジアは、直行便が就航している空港からも比較的アクセスしやすい温泉が上位になっており、欧米豪は主要空港から少し離れた中部や日本海側の温泉も上位にランクインしています。
アジアで1位の由布院温泉の周遊状況を確認すると、福岡県からの移動が最も多いことから、アジア各国から福岡を起点に、空港や港から公共交通機関を利用して訪れることのできるアクセスの利便性が人気の一因と考えられます。
同様に、欧米豪で1位、アジアで2位にランクインした箱根湯本温泉の周遊状況を確認すると、東京からの移動が最も多いことがわかります。東京から公共交通機関で行きやすい場所にあるという立地が、上位にランクインした要因の一つであることが結果からうかがえます。
温泉地内での周遊状況を見ると、アジアで3位の登別温泉では、のぼりべつクマ牧場にも訪れている様子が見られました。
欧米豪で2位の湯田中渋温泉郷では、冬には野生ニホンザルが温泉に浸かる様子を観察できることで知られる地獄谷野猿公苑にも訪れていることが滞在データから確認できました。
写真(左)のぼりべつクマ牧場(北海道登別市)、写真(右)地獄谷野猿公苑(長野県山ノ内町)
2.国別の訪日外国人滞在者数ランキングTOP5(韓国、中国、オーストラリア)
実際に温泉地を訪れている外国人旅行者の来訪状況を国別に分析しました。アジア・欧米豪のうち、上位の温泉地に特徴が見られた、韓国、中国、オーストラリアの各国から温泉地を訪れた分析結果を紹介いたします。
・訪日外国人滞在者数ランキングTOP5(韓国)
韓国からの旅行者が最も多く滞在している温泉地は、大分県由布市の由布院温泉でした。2024年7-9月期のインバウンド消費動向調査(※1)の結果を見ても、韓国国籍の旅行者は福岡空港入国が23.0%と関西国際空港に次ぎ多く、福岡からの移動の利便性が滞在数を押し上げている一因と考えられます。
また、滞在データを見ると由布院駅から宿泊施設や商店街の並ぶ駅前・由布見通りを進み、湯の坪街道・たけもと通りを経て金鱗湖周辺にも滞在していることがわかります。
由布院温泉観光協会によると「由布岳の麓にある金鱗湖は、湖の中に立つ鳥居や、秋から冬の早朝に朝靄に包まれる景色の写真がSNS等で話題になり、外国人旅行者に人気のようだ」とのことです。今回の国別分析においては、韓国の旅行者は商店街での買い物に加え、SNSで話題となっている自然豊かなスポットにも高い関心を寄せていることがうかがえます。
※1 観光庁: インバウンド消費動向調査(2024年7-9月期 1次速報)
写真(左):由布院温泉、(写真右)金鱗湖(大分県由布市)
・訪日外国人滞在者数ランキングTOP5(中国)
中国からの旅行者が最も多く滞在している温泉地は、和歌山県白浜町の南紀白浜温泉でした。南紀白浜温泉へは大阪・京都・和歌山からの移動に加え、那智勝浦町から白浜町への移動も確認できます。
また、滞在データを見ると、南紀白浜温泉の周辺にある観光スポットにも滞在が確認でき、宿泊施設や白浜銀座商店街などを中心に、白い砂浜の白良浜、太平洋を臨む巨大な岩盤の千畳敷への滞在が多いことがわかります。
白浜町観光課によると「以前からアジア圏、特に中国の方の訪問は多かったが、2024年は段違いに増えている。特に白良浜は中国だけでなく、欧米豪の旅行者からも人気で、海水浴シーズン後もたいへん賑わっている。また、露天風呂の崎の湯にも、朝8時前から入浴に訪れる中国からの旅行者もいるほど」とのことです。今回の国別分析においては、中国からの旅行者は温泉地周辺で買い物や自然景観を楽しむ様子が見受けられます。
写真(左)南紀白浜温泉 崎の湯、写真(右)白良浜(和歌山県白浜町)
・訪日外国人滞在者数ランキングTOP5(オーストラリア)
オーストラリアからの旅行者が最も多く滞在している温泉地は、1位 神奈川県箱根町の箱根湯本温泉でした。2位から4位の温泉地を見ると、長野県山ノ内町の湯田中渋温泉郷、長野県野沢温泉村の野沢温泉、北海道ニセコ町のニセコ温泉郷と、すべてスキー場が隣接する温泉地という共通点があります。
野沢温泉マウンテンリゾート観光局によると、「オーストラリアでは夏の時期に日本は冬となるため、夏季休暇を利用して滞在する方が非常に多い。冬季のピーク時は月単位の長期滞在者や、ワーキングホリデーを利用して就労する方など、野沢温泉村の村民のように過ごされる方もいるほど」とのことです。今回の国別分析においては、オーストラリアからの旅行者は、温泉とスキーなどのウィンタースポーツを楽しんでいることが推察されます。
写真(左)野沢温泉(長野県野沢温泉村)、写真(右)ニセコユナイテッド スキーリゾート(北海道ニセコ町)
ナビタイムジャパンのNAVITIMEデータ分析チームでは、訪日外国人観光客の動態を明らかにする行動データ分析を通じて、日本全国の各地域で様々な風習や伝統を持つ日本の魅力の発掘に貢献できればと考えています。
本分析で活用している『Japan Travel by NAVITIME』は、2013年10月に提供を開始した、訪日外国人旅行者向けのナビゲーションサービスです。2024年9月からは、日本の温泉旅館の検索・予約サイトを提供しています。観光庁の調査によると、2024年10月の外国人延べ宿泊者数は前年同月比22.4%増、2019年同月比49.0%増となりましたが、大都市圏への偏在が課題となっています。(※2)
温泉地に関するサービス提供やデータ分析を通じて、比較的地方部に位置する温泉地の魅力を効果的に発信することで、インバウンドの体験価値向上と地方誘客および活性化に貢献できればと考えております。
また、『Japan Travel by NAVITIME』では、温泉のほかに、歴史、自然、グルメなど旅行者に関心のあるスポットをランキング形式で紹介する機能も提供しています。日本人を含むさまざまな国籍の検索ランキングを比較でき、旅行者が新たな訪問先を発見するサポートも行っています。
※2 観光庁:宿泊旅行統計調査(2024年9月・第2次速報値)
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ナビタイムジャパンの移動データ事業部データ分析チームでは、道路交通や公共交通、国内観光や訪日外国人について、移動に関する各種ビッグデータを活用した分析を行っています。
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●関連プレスリリース
・(2024/11/19)漫画・アニメコンテンツによる訪日外国人観光客の誘客・周遊動態を分析
・(2024/10/2)訪日外国人観光客の分析データを定期配信『NAVITIME インバウンドレポート』を提供開始
・(2024/9/18)ナビタイムジャパン、訪日外国人観光客の「鉄道利用動態分析」を開始
●「インバウンドGPS」データについて
「インバウンドGPS」データとは、ナビタイムジャパンが提供する訪日外国人観光客向けナビゲーションアプリ『Japan Travel by NAVITIME』にてユーザーの同意を得て取得された、訪日外国人観光客の移動に関するデータです。
●訪日外国人向けナビゲーションサービス『Japan Travel by NAVITIME』
▶紹介サイト
▶日本の温泉旅館の検索・予約サイト
●画像提供(敬称略)
・由布院温泉、金鱗湖:由布院温泉観光協会
・白良浜、千畳敷 :南紀白浜観光協会
・有馬温泉金の湯 :神戸観光局
・地獄谷野猿公苑 :山ノ内まちづくり観光局
・のぼりべつクマ牧場:のぼりべつクマ牧場
・城崎温泉 :豊岡市役所市長公室秘書広報課
・草津温泉 :草津温泉観光協会
「NAVITIME」「インバウンドGPS」は、株式会社ナビタイムジャパンの商標または登録商標です。
その他、記載されている会社名や商品名等は、各社の商標又は登録商標です。